Expedision(account of voyage)

 

 


第四回「はじめの一歩」第一章「おじさん3人種子島に行く」

出発前に種子島について自分が知っていた事は、”ロケットがある”事と”自分達が尋ね

る2週間後に”日食”がある、って事くらいで他は無知に等しい。あるいはこうやって遠

征から帰ってきて、日焼けで火照る顔を時々左手人差し指で摩りながら記事を書いている

今ですらそれはあまり変わらないのかもしれない。

 

 

’09年7月10日金曜日。今回ご一緒させて頂く同船者の方とのファーストコンタクト

は東名阪を西に向かう時速数十キロの車中午前6時40分の事だった。

前日、と言うか当日の夜中までルアーを削っていて眠い。

携帯の着信音をステップアップに設定しているので、どこか遠く記憶の彼方、どこからと

もなく残響音の様に聞こえてくる呼び出し音に気がつくのに少々時間が必要だった。画面

には”公衆電話”の表示が点滅している。

「誰からだろう?」

今回は自分を含めて3名での遠征で、種子島は何度か経験のある大塚さんとGT初挑戦の

増田さんとご一緒させてもらう事になっている。

自分は国内GT釣行デビューだ。

大塚さんの携帯番号は、今回この遠征の手配をしてくれたトラベルプロインターナショナ

ルの山田さんから聞いていたが増田さんの携番は知らなかった。

飛行機は8:00発なのでお2人どちらかからの電話にしては少し早すぎる気もするし、

それに公衆電話って?

取り敢えず通話ボタンを押して「もしもし」って言ってみた。

「おはようございます、今回種子島ご一緒させて頂く増田です。」

「あぁ、おはようございます。よろしくお願いします。今どこですか?」

「空港の中です」

「えっ、めっちゃ早いですね」

後からお聞きして解ったのだが、増田さんは飛行機に乗る事自体が30年ぶりで心配にな

り、かなり早めに空港の近くまで来て車の中で少し寝ていたそうだ。自分もいつも利用す

る”@エルカ”という駐車場に車を預けて既に空港の中にいるのだが、携帯電話を車のダ

ッシュボードの上に置き忘れてしまったとの事。

後々分かって来るのだが、自分よりひと回り以上ご年配の増田さんはかなりのあわてん坊

さんで(失礼します)凄くユニークで面白い方だった。この後遠征中「あっ!〜〜忘れち

ゃった」「あっ、〜〜忘れた!」という言葉がこの後何度も増田さんの口から発せられる

事になる。

駐車場の人に持って来て貰うという話になりかけたが、朝の忙しい時間だと考えられるの

で自分が預かって渡す事にした。

 

 

”@エルカ”につくといつもの元気の良いお兄さんはいなかったが、いつも通りスムーズ

に手続きを済ませて貰った。

@エルカさんにはポイントカードがあるのだが、2回ほど押して貰い忘れた時があった事

をボソッと言うと余分にスタンプを押してくれた。嬉しい♪

「やった、ラッキ」

少しだけ季節は早いが、時間帯的に小学生の時にラジオ体操が終わると押して貰えたスタ

ンプみたいで、一瞬夏の朝の空気や早起きの眠たさを思い出した。

空港への送迎車の中で景気や社会情勢について運転手さんが話していて、自分は丁寧に相

槌を打ったが、頭の中は「GT釣れっかなぁー?」と期待と不安で埋め尽くされていた。

この送迎車の車中は自分にとっての日常と非日常の境界線の様なものだ。

運転手のお父さんは人懐こそうな定年退職後のアルバイトの方で恐らく自分の父親と同年

代だろう。「少しでも体を動かして働いて、多少の小遣いが出来れば楽しい」って言って

いた。

自分の30年後どうなっているのだろう。ちょっとイメージが沸かない。

ただ単純に「今の自分の延長線上に30年後の自分がいるんだな」って事だけが多分確か

な事で、後は良く分からない。アハハ、分かったら可笑しいけど。

空港に到着して荷物を降ろすと「ありがとうございます」と言って国内線の出発ロビーに

向かった。

 

 

ロビーに着くとすぐに預け荷物のセキュリティーチャックとJAL国内線カウンターでの

手続きを終わらせて増田さんを探す為にウロウロしだす。

増田さんの携帯は自分のポケットに入っているので連絡は取れない。

増田さんも喫煙家だと聞いたので「なんとなく喫煙ルームの周辺で」と決めたが良く考え

たらセントレアには喫煙ルームが2つある。しかも端っこと端っこ‥‥。もう1つの喫煙

ルームは国際線の側にあるので、まさかそちらに行ってはいないと思うけど、さっき飛行

機は30年ぶりだと言っていたので当然中部空港も初めてだと思った方が良いよね?

電話では黒いアロハを着ているって言ってたけど、それらしい人がいない。

自分は分かりやすいように、目印にサングラスをかけている。

喫煙所の中をシゲシゲと見渡してそれらしい人がいないので通り過ぎて、ズラーッと椅子

が並んでいるスペースを丹念に見て回ったが見つからず、喫煙スペースあたりに戻ると黒

いアロハを着た男性がこちらを見ている

「あっ!増田さんですか?」「はい。おはようございます」

どうやら喫煙ルームの中ばかり一生懸命見ていて、目の前に立っていた増田さんに気がつ

かずにスルーしてしまっていたようだ。何を隠そう自分もスーパーあわてん坊さんなので

あった。

今考えるとサングラスを目印にしたものの、増田さんからしてみれば朝っぱらからサング

ラスをかけた兄ちゃんに声をかけて「もしも人違いだったら」と考えると声がかけ難かっ

たに違いない。次に誰かと待ち合わせをする時は、天辺にチューリップが咲いているハッ

トでも被って行こうか。東急ハンズにもドンキホーテにもそんなふざけた帽子は売ってな

いかも知れないけど。

 

 

慣れない空港で一人っきりだった不安を拭えたのか、ひとしきり挨拶が済むと増田さんは

堰を切った様に話始め、自分はGTフィッシングについて質問攻めにあった。

自分だって経験豊富でもなければエキスパートでもないのだけれど、山田さんから「一人

は初心者だから色々と面倒見てあげてね」と頼まれていた事もあって「自分も全然知らな

いですけど」と丁寧に断ってから一つ一つ質問に答えていった。

2人とも3本目のタバコに火を点ける頃になっても話が終わるどころか段々と盛り上がっ

て行く一方だ。

自分も未だにGTに対する情熱は少しも色あせてはいないが、初釣行の時は抱えきれない

程の期待感とワクワク、それと同じ位の不安で頭と気持ちがパンクしそうだったのを思い

出して気持ちが凄く分かったし、釣りに対して一生懸命になっている人と話す時間はとて

も得がたいものだと思う。

話の途中、ふと腕時計を見ると出発まで30分を切っていた。

そういえばまだ大塚さんから電話がかかってこない。

大塚さんとは以前一度電話で話した事があったが、一度もお会いした事がなく顔が分から

ない。電話の声は凄く優しい印象で、勝手に線の細い方だとイメージしていた。

「時間的にそろそろヤバイな」と思ったので増田さんとの楽しい話を一旦中断して大塚さ

んの携帯に電話をかけた。

「もしもし」

と言うと喫煙ルームのガラス越しに、目の前に立っている色黒でかなりガッシリした体格

の男性が同じタイミングで携帯を取り出して話をし始めた。

「あれっ?」

自分の携帯から聞こえる声と色黒ガッシリの男性の口元の動きがパーフェクトにシンクロ

している。

声質と体格はシンクロしていないけれど。

「すぐそこに居ましたねぇー」

ガラス越しにお互い「アハハハハ」と笑った。陽気な刑務所の面会みたいだ。

 

 

大塚さんの手続きが終わるのを待って手荷物検査場に向かった。

携帯電話を通さずに聞く大塚さんの声は、その立派な体格に見合って少しシャガレて落ち

着いた雰囲気の音質だった。

増田さんは重量オーバーを指摘されて、手荷物が大幅に増えてかなりの大荷物だ。

「わし、ド素人だもんで。いらんモノばっかり持ってきてまって、大荷物だわ。」

と申し訳なさそうに言っていたが、自分もそうだったし、初めて行く遠征は荷物が増えて

しまうのは仕方がない。大塚さんもニコニコしながら

「そんなもんですよ」

と言った。

今回は10日金曜日に有給休暇をとって遠征を組んだので、平日朝の空港は割りと空いて

いた。遠征と言うと大抵は大型連休を使って行くので、特に正月なんかはいつも大混雑の

イメージが強いが、そう言えば仕事の出張の時とか平日はこんなものだ。ちょっと得した

気分♪

3人が合流した時間が丁度良かったので、それ程待つ事もなく順調に機内入り。

JAL中部空港発ー鹿児島空港行きの飛行機は滑走路を離れ、車輪を折り畳んで機首を持

ち上げた。

いつも遠征の飛行機移動の時は、席について落ち着いたら飛び立つのを待たずに寝てしま

う事が多いのだが、釣りの話が楽しくてついつい3人で話し込んでしまった。

増田さんは興奮すると段々声が大きくなる。自分もつられて声が大きくなりかかるが、気

がついて音量を落とし、増田さんもそれに気がついて音量を落とす。

大塚さんは落ち着いた感じの方だが、釣りの話は本当に楽しそうにするし、また聞き入っ

ていた。

自分が一番年下ではあるが、3人とも”おじさん”だって事は変わらない。

そして3者3様ではあるが、”釣りが大好き”って事も一緒だ。話していて楽しくない訳

がないのだ。

そんなこんなで、機は感覚的には20分くらいで実際には1時間数十分後に鹿児島の地に

車輪を降ろした。

 

 

種子島行きの便までの待ち時間は1時間ほど。取り敢えず喫煙者の増田さんと自分は煙が

立ち込める喫煙ルームに閉じこもり、喫煙の悪習慣を持たない大塚さんはトイレに向かっ

た。

タバコを吸い貯めしながら、増田さんと機内の話の続きをした。話は尽きない。

少し時間が気になって目線で大橋さんを探していると、喫煙ルームの中に見た事のある顔

‥‥いや、頭があった。

「あれっ、誰だっけ?」

声に出さずに考える。向こうも同じ事を考えているのだろう。お互いに暫く視線を逸らさ

ずに凝視し合った。

思い出したのは自分が先だった。

「ぁあ!コモドの時に一緒になりましたよね?」

「ぁあ!そうそう!」

お名前は思い出せなかったが、自分が勝手につけたあだ名は思い出せる”つるピカはげ丸

くん”、前回のコモド釣行の時にダイバーチームの1人として、同じマザーシップで過ご

した方だ。この頭は忘れない。でもこんな所で合うなんて。

「しょっちゅう潜って見えるんですね?今回はどこ行くんです?」

「いや、あれからは初めてですよ。いやぁ奇遇ですねぇ。今回は屋久島ですよ。」

「コモドの時は年明けから酒飲んで大暴れしてしまってスミマセン。多分旅行会社の方に

も迷惑かけたし、反省してます。」

「いやいや、面白かったですよ。あの後自分も太鼓叩いてたし」

はげ丸くんは釣りにも興味シンシンで一度海外の釣堀(ピラルクーやバラマンディーがわ

んさかいる有名な釣堀)に一緒に行こうと言う。

その時のノリで実現するかどうかは分からないが、もし行くなら一緒にトラベルプロに頼

もう、という事になった。

例え実現しなかったとしたって全然良い。そんな話をするのも楽しいじゃないか。

はげ丸くん、縁があったら一緒に行く事になるでしょう。それが何年後になったって良い

じゃないか。

 

 

出発の時間が近づいて来たので、はげ丸くんに「じゃ、また!」と別れを告げ、大塚さん

と合流する。

そして我々おじさん3人は種子島行きのプロペラ機のシートに収まり、20分のフライト

に身を任せた。

 


 第四回「はじめの一歩」第二章「豊生丸岩元船長〜半日分のキャスト」

種子島空港着陸と同時に結構な振動と音が鳴り響き、気を抜いていたので少しビックリし

てしまった。

機内のランプが消灯しタラップを降りてみると、かなり風が強く吹いている。

道理で揺れた訳だ。

視界にバタバタと風にたなびく木々をとらえて少し、ってか到着早々に大幅にテンション

が下がってしまいそうになる。

少し呆然としていて、2人がスタスタに歩いて行ってしまったのを後ろから追っかけて自

分も空港内に入っていく。

ごく小さな空港だが小奇麗で感じが良い。

空港が小さければベルトコンベアーもちっさい。回転すしのチェーン店のコンベアの3分

の1くらいの大きさだ。

おじさん3人は回転すし屋でネタを選ぶように並んで立って、流れる荷物を目を凝らして

見ている。1回目に廻ってきた時に見逃すと、次に廻ってきたときにはカピカピに乾いち

ゃっているかもしれない、大変だ。

ロッド等の長モノは最後に出てくるか、係員の人が運んで来てくれるのでどっちにしても

時間がかかる。

自分は先に民宿豊生にロッドを送っていたので先にゲートを出ると、先ほどからこちらを

気にして見ている方がいる。多分岩元船長だと思うのだが、手にロッドを持っていない日

焼けした怪しげな男が1人。こちらから声をかけることにした。

「船長ですか?」

「あっ、ハイ」

「お世話になる妻木です。」

増田さんと大塚さんがロッドを手に出てきて、4人揃って挨拶を交わして、さっそく3人

分の旅行カバンとロッドケースをステップワゴンに詰め込んでいざ発進。

 

 

途中飯屋に入って、迷った挙句鳥唐揚げ定食を頼んで目一杯頬張った。

ガッツり食ってリキつけなきゃ。午後から直ぐに出船なのだ。

予定では初日の昼食はそれぞれの払いだったが、船長の好意でご馳走して貰った。ありが

たやありがたや。

満腹いっぱいになって重くなった体をズルズルと引きずってステップワゴンに乗り込んで

再度出発、民宿豊生へ。

道中車は何度か橋を渡った。川がある。

昨日までずっと雨が降っていたと聞いた。根拠は全くないのだが、島ってモノにはあまり

川が無い様なイメージを自分は勝手に持っていた。

「川があるじゃん!」

「えぇ、アカメがいるんですよ」

「ぇえ!アカメいるの?釣りてぇー!!」

って、タックルは持って来ていないし、本命のGT釣る前から浮気をしている場合じゃな

い。

それより水潮は大丈夫なのだろうか?相当気になる。

的を得ているのか得ていないのかすら判らない疑問を抱えたまま、ステップワゴンは民宿

宝生に到着した。

車から荷物を降ろして、玄関ではなく宿泊する部屋に土間を跨いで直接運ぶと船長の父上

が丁寧に出迎えてくれた。

「1時丁度くらいに出船しますよ」

今12時30分少し過ぎ。港までは10分くらい。急いで準備しなくちゃ。

って思ったけど自分が準備を終えると既に出船予定の1時になっていた。

自分はちょこっとのろまな所があって、誰と釣りに行っても大抵準備が終わるのは一番最

後だ。迷惑かけてすみません。

 

 

港に向かう車中でもう1つの気がかりを思い出した。船の事だ。

山田さんから前もって聞かされていたのだが、今回豊生丸はエンジントラブルでドック入

りしていて代わりの船で釣りをすることになっている。

休みが自由に取れない身なので「それでも良いです」と来てみたものの、やはり気にはな

る。

漁港に着いて「この船だよ」と指差された船を見て固まった。丸っきりの漁船なのだ。ミ

ヨシで2人トモで1人、どのポジションでキャスティングしたとしても自由に身動きが出

来るのには程遠い。納得ずくで来たとは言え大丈夫だろうか。

チラッと2人を見ると大して気にしていない様子だ。

大塚さんは岩元船長とは3回目だが、たまたま船のトラブルと重なってしまって未だ豊生

丸に乗ったことがないらしい。増田さんはGT初挑戦なので全部違和感無く受け入れてい

るのだろうか。

ここまで来て細かい事を気にしていても仕方がないかなぁ。よくよく考えてみれば天候や

他の状況、全ての条件が揃って釣りが出来るなんて事が今まで何度あっただろうか?いや

ぁ、ほとんどなかった気がするなぁ。って事で2人と同じ様に最初から気にしていなかっ

たテイを決め込んで、出船するまでには本当に気にならなくなってしまった。脳タリンも

時には便利だ、アハハハッ。

 

 

‥‥‥ッッッッテロテロテロテロテロッッ(携帯の呼び出し音)

今まさに出船するって時に、勤めている会社の本社の女子社員から電話がありトラブルを

知らされ、またまたマイナー路線に突入。

有給休暇を貰って、今日までに予定の分の仕事をやっつけて種子島までルンルンでやって

来たのに、急な予定変更があったらしい。

気になるじゃねーか!!

出鼻をタイミング良くくじかれたまま船は港を離れ、強風を避けて選んだポイントですら

船は相当の風を受ける。

おまけに水潮が入っているのか、水色は緑がかったくすんだブルー。

船が釣りし易かろうがし難かろうが、自分のモチベーションが高かろうが低かろうが、良

くない知らせが携帯電話の呼び出し音を鳴らそうが鳴らすまいが。

そんなの全く持って綺麗さっぱり関係なく、3人とも強風にあおられながらも半日を丸々

キャスティングし続けたが、ただのワンバイトも無かった。

風は強いのに、嫌味のように太陽はガンガン照りつけた半日だった。

 

 

ヒリヒリとする鼻の頭を人差し指でスリスリする。スイッチを入れて直ぐのエアコンの、

少し湿り気の残る風に揺られて伸びすぎた髪が額を撫ぜて痒い。

明日はバイトくらいはあるだろうか?

俺にはわからん。

「宿帰って飯食って風呂入って寝るべ」

 


 
  第四回「はじめの一歩」第三章「中いびき〜ロケット基地」 

宿に帰ると既に食事が準備されていた。

魚のご馳走もありがたいし、カレーを出して貰ってこれが合宿気分をあおって楽しい美味

しい。

船長は後で食事を取る様でビールだけを飲んで、4人で釣り談義がおっ始まった。

食事を出して貰った部屋には沢山の釣果写真が飾られていた。ウヒョー!デッカイのがワ

ンサカ。

「良いなぁ〜〜」

思わず思いっきり本音が口をついて出てしまう。

今日は釣れなかったけど明日があるから、まっいっか。明日は明日でガンバりゃいいやな

ぁ。それしか出来ることないし。

 

 

 明日は7時出発。6時半には起きなきゃ。

暫く喋くって食って、1人づつ風呂に順番に入ってひと心地ついたら今度はノットを作り

直す。遠征ではこれが一番大事で、同時に1日頑張ってネムネムの眠い状態では一番面倒

臭くもある。

大塚さんと自分で増田さんにノットを説明したり出来上がったノットをチェックしたりし

ていて、気がつくと自分だけノットが出来上がっておらずおまけに未だ風呂にも入ってい

ない。

急いで、でも慎重にノットを作り終えて風呂に入る。

「プゥッハァー」

いつもは風呂嫌いな自分でも遠征先でのお風呂は楽しみの1つだ。ゆっくりと丁度ぬる目

になって気持ちの良い湯船に体を沈める。きんもちえー!

部屋に戻ると増田さんが大橋さんにノットの駄目出しを食らってまた作り直していた。そ

ろそろ眠い。

眠りに着く前に増田さんが

「ワシ、イビキかくけど良いかなぁ」

「気にしませんよ、慣れているし」

2年連続でコモド遠征でご一緒した一瀬さんも章司さんもイビキが物凄かった。ジェット

戦闘機クラスで、1年目に一瀬さんに頂いた耳栓は、もしもの為に未だに遠征時に手放さ

ずに持ち歩いている。

明かりを消すのが早いか増田さんが眠りにつくのが早いか、速攻でイビキをかき始めた。

小型セスナクラスのイビキだったので、これなら気にせづグッスリまったり心置きなく眠

れそうだ。

程なく自分にもぬるま湯のような眠りが訪れた。

「むにゃむにゃ」

おやすみなさーい。

 

 

 

6:30。

朝起きるとちょっと寒かった。

一瞬コモドでの惨状を思い起こしたが、7月中旬の南の島にも関わらず無意識にしっかり

布団を被っていたので問題はないと思う。

あの時の経験で「次から南の島でもフリースかスウェットを持って行こう」と思いはした

のだが、あれ以来単独遠征ばかりだったのですっかり忘れちゃっていた。

布団がなかったら風邪をひいていた。自分は冷房にめっぽう弱い。ヒューッ(手で汗を拭

う音)危ないところだったよ。

大橋さんは一番先に起き出して洗面所に歩いていった。

外を見ると木が大きく揺れて風の音が聞こえた。不安はどこかに隠しておくことにする。

増田さんは一向に起きる様子がない。

暫くは2人が支度を進めていたが、あまりにも熟睡しているので、大きな声で

「増田さん、起きて!」

と呼ぶが反応がない。

結局増田さんが起きたのは、5度目の呼びかけの時だった。

「おはようございま〜す。」

全員が準備を終える頃になって時計を見ると、7時を5分ほど過ぎていた。まさかと思っ

て大橋さんが路地に登って見に行くと船長が車の脇でタバコを吸って待っていた様だ。

3人急いで荷物を運ぶ。

「船長おはようございまーす」

コンビニに寄って、ステップワゴンは強い風が吹く島内を縦断する。

今日は昨日とは違う港からの出船になり、船も昨日とは違うそうだ。

船長は甘い菓子パンを食べている。毎日の暑さで甘いものが恋しくなるようだ。船長は菓

子パンやアイスクリームをよく買い求めていた。

20分か30分くらいでロケットの模型が目に飛び込んで来た。

「今日はクソでかいGTを釣って、帰りにロケット(模型)の写真を撮ろうっと。」

と密かに思った。

小さな漁港は左右に見えるロケットを通り過ぎて、船長がハンドルを右に回したカーブを

曲がって直ぐの所にあった。

そこでだけは堤防で風は遮られ、太陽は猛暑の1日を感じさせるのに充分なエネルギーを

発し始めていた。

 

 

 

どの船で出るんだろう?

 


 

 第四回「はじめの一歩」第四章「実釣2日目の攻防〜ハイテンションおじさん」

 小さな漁港は左右に見えるロケットを通り過ぎて、船長がハンドルを右に回したカーブを

曲がって直ぐの所にあった。

そこでだけは堤防で風は遮られ、太陽は猛暑の1日を感じさせるのに充分なエネルギーを

発し始めていた。

 

 

 

どの船で出るんだろう?

その船はこの港の1番目立つ所に係留されていて、その前に初老の男性が立って待ってい

た。

この船を見て少し安心した。昨日のよりはデッキがかなりスッキリしていて投げやすそう

だ。フロント側で3人揃って投げられる充分なスペースがあった。

小回りが効かないのは仕方がない。漁船なのだ。しかし所々にチビラーク(餌釣りの時に

使う竿受け)が取り付けられているので、もしかしたら釣り船なのかも知れない。

この船の船長は人柄の良さそうな人で、挨拶をすると

「釣れると良いねぇ」

とニッコニコして言ってくれた。

 

 


荷物を積み込んで、足早に出船し程近いポイントから実釣スタート。

昨日はジャンケンで釣り座を決めて、前から増田さん・大塚さん・自分の順だったが、昨

日何もなかった為に暗黙の了解で同じポジショニングで立ち居地が決まった。

自分は1番後ろだが、床にモノが転がって竿を振る方向も制約された昨日の船のトモでの

キャストのし辛さを考えれば十二分に充分だ。

しかし、朝から暑い(汗)

風が無ければ茹だってしまうがちょっと強すぎ吹きすぎ、波も結構高い。

意気揚々とキャストを始めたが、昨日のポイントよりもマシだとは言えくすんだ水色と”

やっぱりなー”なノーバイト。3人のモチベーションが落ち始めるのに1時間と要しなか

った。

そのままずっと長い時間が魚の反応も一切無く流れて行く。

繰り返されるキャスティングと、高い波に揺れるデッキで平衡を保つ作業がジワーッジワ

ーッともう青年とは呼べない年齢に(自分は微妙なところだけど)達している男たちの体

力を確実に奪っていく。

3時間もするとお2人は休憩しがちになってきた。お2人が「妻木くん元気良いねぇ〜」

と言うが、元気が良いというよりも単純に素晴らしくあきらめが悪く投げ続けるしか脳が

ないだけだ。

釣れない時でもいつもこんな調子だが、この頑張りが報われるのは10回に1回もないだ

ろう。確立10パーセント以下だ。解っちゃいるけどやーめらーれなーい。

自分も40代がすぐそこまで迫ってきている。自分ではタフなつもりだが、後先を一切考

えない釣行プランや一切休憩無しのオフショアゲームスタイルには早めに見切りをつけた

方が良いのかも知れない。

遠征が増え始めた最近は、いつもそんな事を考える。

でも変わるキッカケが分からんのです。

今の所は移動の間の時間で体を休めれば、1日10時間実釣×5日間くらいは何とかやり

切る事が出来るがシンドイ事に変わりはない。無理をして怪我をする前に自分で基準を決

めなくちゃイカンのだけど。

昨日も今日もまだポッパーでミスキャストしていないので未だ集中力は続いている、と判

断してやっぱり休憩するのは止しておいた。

初速が出ずに飛行姿勢も比較的安定しにくいペンシルタイプのルアーはミスキャストしが

ちなモノだが、ポッパーをミスキャストするようになったら相当注意力が欠けている証拠

だ。今度からGTのキャスティングゲームはそれを目安にして、休憩する時はしっかり休

憩しようかな、って思った。

 

 

 

そんな正午前後。

適当に釣り座を交代しながら釣りをしていると、その時ミヨシに立っていた大塚さんに待

望の今回の遠征での初バイト!

揚がって来たのはGTではなく3キロ前後のキハダマグロだったが、本当に一切何も起こ

らなかった辛さの中での待望の反応に一同大喜び

「やったー、やったー!」

と大声で叫び、釣った大塚さんが恥ずかしくなってしまうくらい自分は嬉しかった。

船内に少し活気が戻ったが、その後30分ほど経った所で魔法は覚めた。

ポジションチェンジで増田さんがフロントデッキでキャスト。自分の前でキャストをする

大塚さんに

「さっき大塚さんが釣ったキハダで上がったテンションが、もう落ちました」

「えぇ妻木くんも?僕も丁度今そう思っていたところだよ。2人同時にテンションが落ち

ちゃったね。」

こんな事で気があってもあまり嬉しくない様な気もするが、なんとなく面白くて2人で笑

った。

増田さんも一生懸命キャストを続けている。

山田さんから色々教えてあげて欲しいと言われていた事もあるが、是非今回の遠征で増田

さんにGTを釣って貰いたい。

初GTの喜びはちょっと筆舌に尽くせないモノがある。自分もその時を思い出して、是非

増田さんのGT初キャッチの現場に立ち会いたいと強く思っていた。その気持ちは大塚さ

んも同じだった。

もしかしたら邪魔になってしまったかもしれないが、自分も大塚さんも思いつく事を一つ

一つ増田さんに説明していった。きっとこの時3人とも気持ちは一緒だったんじゃないか

なぁ、と今でも思っている。

 

 


そのまま数時間、やはりキハダ以来何も起こらず時間はカッチカッチと無常に過ぎて行く。

午後3時頃。

時折少し弱まる気もするが波は高く、依然風も強く吹きっぱなしだ。

「来た!来たっ!」

惰性が支配していた船内にいきなり増田さんの叫び声が響く!

「GT?GT?」

「食った!食った!!!」

増田さんの体はデッキの手摺に押し付けられて腰も浮いてしまっている。ドラグが強すぎた

のか?魚がデカイのか?

しまった!!全くバイトが無かったのでドラグ調整やファイトの仕方については何も言って

なかったっけ?

素早く船長が増田さんの背後に立って腰をつかむ。

10メートルほどの至近距離でヒットした様で、自分もデッキの一段下まで来て水面を見て

いると直ぐに魚体が回りながら上がってくるのが見えた。10キロ前後だろう。

「おぉっ!増田さん、最初には丁度良いサイズがかかったじゃん!やったね!」

「えぇ、これ小さいの?ワシ、60キロ釣っちゃったかと思っただけど!」

船長が直ぐにランディングの態勢に入った。

増田さんがロッドを魚の側に下ろさない。

魚が暴れる。

船長がネットを引っ込める。

もう一度寄せてランディング態勢に入る。

「増田さん、ロッドを下げて」

「ぇえっ??」

ネットに半分だけ魚体が収まる。

「増田さん、ベイル反して!ベイルベイル!!!」

増田さんは泡を食ったように焦る。

こっちも気が気じゃない。

ラインがフリーになっていないので、魚がネットに半分だけ入った状態でラインに外方向

に引っ張られ、それ以上ネットに入っていかない。うわっっ、ネットにフックが引っかか

った。

「うぁー!!!」

げげっ!ばれてしまった。

「ゴメン、かけてからの事教えてなかった、ゴメン!」

増田さんは呆然と立ち尽くしいている。後一歩でキャッチだったのに惜しかった。残念で

残念でならない。昨日今日の状況を考えると、この先そう何度もチャンスが訪れるとは考

えにくい。これは潜在一隅のチャンスだったのかも知れない。悔やんでもしょうがないが

、それでも悔やみきれない。

「GTってすっごいねー!ワシさっきの物凄い大きい奴かと思った!」

ばらしたとは言え人生初のGTをかけたのだ。増田さんは一心地つくと今度は先程のやり

取りを思い返して興奮している。

「船長、さっきのあれ何キロくらい?」

「丁度10キロくらいやろなぁ」

大塚さんと自分は黙って頷いている。1匹目の経験としては本当に最適この上ないサイズ

だったのに。大塚さんも自分も少し責任を感じて、そして大いにガッカリしている。

 

 


その日はやはり納竿までそのまま何も起こらなかった。今日1日を通してGTのバイトは

増田さんのあの1匹のみだった。

増田さんが

「ワシ、このまま釣れんでもあのGTかけれたから満足だよ。」

と言っている。まだ興奮している様だ。自分達に気を使ってくれているのだろうか。自分

がバラしたよりも悔しく感じた。増田さんのGT初バイトなのだ。どうしても捕らせてあ

げたかった。初バイトはどんな人にだって1回しかやって来ないのだから。

 

 

 

港に戻る途中、船長が自分に明日の事を切り出して来た。

「妻木さん明日どうしますか?」

「うーん、今日はかなり悪かったけど最後にワンバイト出たし、水色も少しよくなって来

たみたいですよね?判断は船長に任せますけど、僕は南に戻ってやるよりも明日も北側で

やった方が良いと思う。」

「そうですね。僕もそう思います。本当は明日他の船に頼んでいたんだけど、断って明日

もこの船でやりましょう。明日はもう少し水色が良くなっていると思いますよ。」

「明日には5時に宿を出ましょう。」

そういう事に決まった。

 

 


助走をつけて漁港の堤防によじ登り海の写真を撮った。綺麗だ。そして予定通りには釣れ

なかったけどロケットの写真を撮った。

宿に帰る途中の駄菓子屋チックな店で船長にアイスクリームをおごって貰う。増田さんと

大塚さんと船長は確かガリガリくんとかのアイスキャンディーを食べた。

自分はキャンデーよりもクリームが好きだ。そう言えばガリガリくんと言ったら地元の友

達のI部という奴は凄いガリガリくん好きで、キャンディーが苦手な自分が1本食う間に

3本は食ってそれが自慢だった。すぐに腹を壊したけど(笑)

車内のクーラーが程よく体をクールダウンしてくれる。夕焼けが綺麗だ。

2日連続で釣れなかったけど、自分だけ何も起こらなかったけど、不思議と焦りの気持ち

は芽生えなかった。

何だか眠たかったが、眠くって頭が上手く働いていなかっただけかも知れない。

ふと、ずーと黙っている大塚さんに気がついてこっそり声をかけた。

「大塚さん。増田さん昨日は直ぐに寝たけど、今日は興奮してきっとなかなか寝られませ

んよね」

「フフフッ、本当だよね、きっとなかなか眠れないよ」

大塚さんと自分は増田さんに気が付かれないように小声でクスクス笑った。増田さんは自

分よりも一回り以上年配だが、1つ1つの反応がピュアであわてん坊で面白くって愛すべ

きキャラクターだ。そして興奮すると話が終わらなくなる。

 

 


宿に帰ってロッドを洗う時に増田さんがどれ位のドラグに設定していたのかを見せて貰う

事にした。

「こんなドラグでファイトしてたの?!!」

物凄くカッチカチだ。自分もちょっと強めに設定する方だが、比べ物にならない程強いド

ラグだ。増田さんは自分よりも背が高いが、特に筋骨隆々と言うわけではない。

「やっぱり、あれくらいの魚がかかってくれて良かったよ。こんなドラグじゃ30キロ以

上とか、もっとデカイのがかかったら海に落ちちゃうよ」

増田さんが腑に落ちない様子なので、ファイトスタイルをとって貰って、自分が引っ張っ

てみせる事にした。

案の定増田さんは簡単に体勢を崩してズルズルと引きずられてしまった。

「ねっ?これが揺れる船の上で起こったらそれこそ海に落ちるか、そうでなきゃ怪我しち

ゃいますよ」

まだ少し腑に落ちない感じだったが本当に危ないので、大塚さんと自分で説得して明日は

ドラグ設定をもっと下げて貰うことにした。釣ってほしいが、それ以上に怪我をして欲し

くない。増田さんには奥さんもお子さんもいるのだ。いなきゃ怪我しても良いって訳では

ないけど。そんなやり取りの後食事を摂った。

4人で作戦会議をしながら飯を食った。船長は今日もビールだけだ。

飯を食って順番に風呂に入った。

3人でノットを作っていると、増田さんが急に自分の持っているルアーに興味を示してく

れた。ティラノスマウスコモドニクス(長い名前で申し訳ない)だ。

自分はティラノスマウスGTをメインに使っていたので、1個しかないコモドニクスを増

田さんに使って貰っても、まだGTの予備がある。

「増田さん、これ使ってみる?」

「いやいや、ワシ素人だで大事なルアー無くしちゃったら悪いし」

「ルアーはいつかなくなるもんだから、もしこれで釣れたら記念にあげますよ」

「えっ、いいの?」

「良いですよ、釣ったらですからね」

「おぉ、じゃあ使わせて貰います」

別にあきらめた訳ではないが、もし自分がこのまま釣れなくても増田さんがウチのルアー

で釣ってくれたらそれでいかな、とふと思ったのだ。

 

 


疲れた、すげぇ眠い。大塚さんも眠たそうだ。

増田さんはやっぱり興奮してなかなか寝なかった。

電気を消して大塚さんと自分が返事をしなくなっても、まだ増田さんは喋っていた。

「あれ、すごかったなー」

ZZZzzzz。

 


 第四回「はじめの一歩」第五章「最終日に野獣あらわる」

 

午前4時半。

なんだカンダで結局充分な睡眠時間は取れなかったが、以外にも目覚めはすこぶる良かっ

た。

もう今日半日で最後だ、という気持ちが体を無理やりにでも覚醒させた様で、嘘のみたい

に体が軽い。今日は行ける。

って、あくまでも釣り人側からの話で魚のコンディションがどうかは、海の上に立ってキ

ャストし続けていないと分からない。

いつだってそうだ。

 

 

昨日とうって変わって増田さんも直ぐに目を覚ましたし、大塚さんは目覚めが良いタチな

のか今日も一番に洗面台の前に立っている。

昨日、実釣の移動中に船長から

「誰かに使って貰えるように話してあげるから、そのルアー(ティラノスマウスGT)後

から一個送って来なよ」と言って頂いたので、自分の手持ちのプロト6個の内1つを宿に

置いて来た。

民宿豊生に宿泊した事のある方なら思い出すと思うのだが、床の間に鎮座している恵比寿

さまの前にジャジャーンって置いて来た。

勿論昨日の夜は恵比寿さまに

「明日80キロのGT釣らせて下さい」

とお願いして、2人に笑われたのは言うまでもない。

 

  


連日の猛暑と波に疲労が溜まったのか、船長が少し遅れて迎えに来てくれた。

昨日も続く不釣果に頭を悩ませて、何とか自分達に1本でもGTを釣らせてくれようと、

色々と考えてくれた岩元船長。

なんとか気持ちに応えたい。

昨日の打ち合わせ通り2日目と同じ港、同じ船での出船になる。

昨日のおじさんが今日もニッコリと落ち着いた笑顔で出迎えてくれて、かなり心が癒され

る。ヒーリング。

 

 


最終日だという気持ちは皆同じなのか、口数も少な目に荷物を船に運び入れてスムーズに

出船となった。

泣いても笑っても今日が最終日。次にいつ種子島に来られるか分からないが、当たり前に

その時まではここに来られないのだ。当たり前の事過ぎて訳が分かんないけど。

海上は相も変わらず風が強く、この日のファーストポイントでは若干良くなった気もした

がその程度で水色もそれ程良くなかった。

釣り座は増田さんがトップデッキ(の様な場所)でたまに大塚さんが換わって、自分は基

本3番目に位置を取った。

 

 


6時30頃にスタートフィッシングで10時半を過ぎる頃まで、やはり一切何も起こらな

かった。

それにこれまでの状況を考えると、これからウハウハな状況がやって来るとは夢にも思え

ず、「あきらめたら、そこで終わり」の気持ちだけが休まずキャストし続ける原動力にな

った。

「あきらめたら、そこで終わり」

いつだってそう。それは間違いなくそう。

 

 

何度となくポイントを変えたり、はたまた同じポイントを流す方向を変えたり少し筋を変

えたりしながら、ふと見ると水の色の青みが増している様に思えた。

「少し水色が良くなって来たよね?」

「うん、大分良くなって来た、そろそろ出ますよ」

船長がそう言った。

自分もなんとなくそんな気がした。

それから一流しか二流し目。

朝一の気合と目覚めの良さは何処へやら。少し休憩を取りながら釣りを続けていた2人に

もかなりの疲労が色濃く見え始めている。

自分もさっきまでは、集中力が途切れる時間が多かった。

昨日までは1度も失敗しなかったポッパーのキャストも、今日は既に5度失敗している。

水色の変化、を理由にもう1度集中を取り戻す。

自分がもうそろそろ回収動作に入ろうかどうかと考えていて、それでも「もうワンポッピ

ング!」と渾身の一発を入れたティラノスマウスを、視界の外側からガンメタリックに輝

く塊が真横から強烈な勢いで襲った。まるで腹に据えかねた者を有無を言わせず無慈悲に

排除する様に、親の敵でもとる様に‥‥

ズバッッシャー!!!

「ゲッ!!むちゃデカい!」

声になり切らない。驚きのハンマーで頭をガツンとやられた。

バイト劇は目の前10メートル程の至近距離で繰り広げられたが、見た目のエゲツなさと

は裏腹にそれ程凄まじい音はしなかった。

もっともその時の自分がそう思っただけなのかも知れない。

ほんの一瞬のヒルミが突然のバイトに対してしてしまいがちな早合わせを防いだ格好とな

った。

バイトしたGTの動きが何か異様だ。見た目にも相当のサイズなので自分の力など関係な

く余裕で一気に突っ走る突進力を持っているはずなのに、その場でモゴモゴガツガツして

いるみたいに見える。

肉食獣が獲物を捕らえて、その場で激しく首を振りながら肉を貪る姿に似ている。

1発渾身のフッキングを入れたのだが、その時の感触も何かおかしい。

未経験の感触に戸惑ってどう対処したら良いか分からず、とり合えず入れた追い合わせも

迷いが生じて弱めになった。

この事自体は間違った判断ではなかったのだが、結局しっかりとファイトポジションをと

る前にラインブレイクであえなくモンスターGTをロストしてしまった。

回収したラインを見ると、誰がかしめても同じ条件で止まるはずのスリーブから170ポ

ンドラインが抜けてしまっていた。

なぜだ?

暫くして少し離れた所にGTの口から外れて浮かんでいたティラノスマウスを回収すると

ST−76の5/0が曲がり、結束部分は微動だにしなかったとは言えワイヤーはフロン

トフックアイもリアフックアイもズッルーンと引き抜かれて、見るも無残な姿に変わり果

てていた。

ここに書くのも悔しいが船長公証推定最低重量50キロ、60キロオーバーだった可能性

もあるとの事。自分はそれ程何回もモンスターサイズを目にした事があるわけではないの

だが、そう言われても全く違和感の無いとんでもなくイカツイ魚体を目の前で逃してしま

った。

この時11時。

残された時間はあとわずかだ。

あとほんの少しだけ残された時間が過ぎてしまえば、種子島の海に一時の別れを告げなけ

ればならない。

 

 


残された時間はあとわずかだ。

 

 


 第四回「はじめの一歩」第六章「GT初キャッチに歓喜」

 

1回の遠征の結果を例えば”勝ち負け”で言い表すとしたら、’08年末からの自分の遠

征は負け続きだ。

正月コモド→モンスターGTに敗退・3月九州→小型の数釣りに終始・5月同じく九州→

モンスターヒラマサに敗退。そして昨日のルアー&ラインのブレイク。

同船して目の当たりにした同船者の方には分かって貰えるはずなのだが、「所詮逃がした

魚は大きい」と笑い話に笑われても仕方が無い。実際に”所詮”は捕れていないのが誤魔

化しの効かない事実だからだ。

自分が理想とするリアルビッグフィッシュルアーはいくつか完成の域に達してきた。しか

し、釣り人しての自分の進歩がルアーの進歩についていけない現実が今も尚苦しみの種と

なって自分を圧迫している。

 

 

GTに対してはコモドでの敗北感と最終日の体調不良の経験から、完成の域に達したリア

ルビッグフィッシュルアーであるティラノスマウスGTの性能を若干デチューンして、使

い易さや必要体力の低減を図ったタイプのティラノスマウスコモドニクスというルアーの

開発に着手した。

特にビッグゲームにおいては、今後この手法を積極的に取り入れ、リアルビッグフィッシ

ュルアーのサブルアーの充実も図っていくつもりだ。また、体力消耗の激しいビッグゲー

ムではこの手のルアーの果たす役割は大きい、と考えている。

一定したクオリティーを保って投げ続ける事によって大物と出会うタイプのビッグフィッ

シュルアー、という考え方もあるのだ。

リアルタイプでなくとも狙って捕れるのならば、それも1種のビッグフィシュルアーとな

りうるのだ。

勿論元ルアーの開発においても妥協なく最後の最後まで追い込んで煮詰めていて、その結

果が今回のバイトに結びついたのだと思う。

しかし今回も再び敗北感を味わう事になってしまった。

かけても一向に捕れない。ビッグフィッシュに対する若干の恐怖心が芽生え始めてしまっ

た自分に対し、このロスト劇の後自分自身が期待を持つことが出来なくなってしまった。

 

 

ふと、昨日の夜の事を思い出す。

増田さんが急にコモドニクスに興味を持ってくれたので、1個だけ持って来ていたプロト

を渡してあった。自分は最終日にティラノスマウスに賭けるつもりでいたし、初心者の人

が使ってどう感じるかが知りたかった。またコモドニクスには、このルアーの性質上それ

が物凄く重要な事でもあった。

この日スタートフィッシングから1・2時間ほどはコモドニクスを投げていた様だが、そ

れからはずっと手持ちのルアーに変えていた。

興味を持ってくれたから渡したのであって、当然強要するつもりは毛頭ない。

そのことについては何も言わなかったし、他にアドバイスすべきことはその都度伝えた。

いつも世話になっている山田さんから、そうする様に頼まれていた約束を果たしたかった

し、何よりも初GTの感動を増田さんにも味わって貰いたかった。

純粋にそう思った。

自分もそうだが、今回はまだGTをキャッチしていない大塚さんにも絶対にGTを釣って

欲しいし、勿論自分ももう1度だけで良いからバイトを得て、今度は捕りたい。

3人で笑って帰るんだ。きっとそうするんだ。

 

 

気が付くと、多分自分がロストしたタイミングで増田さんが再びコモドニクスを投げてい

た。

はたから見てもかなりの集中力だ。

大塚さんも顔つきが違って来ている。

なんだか2人とも俄然やってくれそうな気がして来た。自分が出した魚が口開けになって

くれれば、と願った。

そして、その通りの事が起こった。

最初は大塚さんにそれが訪れた。

さっきまでペンシルタイプをメインにキャストしていた大塚さんは、やはり自分のロスト

以降、ポッパーにチェンジしていた。

自分も昨日まではペンシルタイプも投げていたのだが、今まで何も無かった分、最終日は

ポッパーの魔力を信じて決め打ちしていた。

たまたまこの選択が項を奏したのか、少なくともこの時間帯は若干反応が良かった。

自分と並んでキャストし、安定したポッピングを続けていた大塚さんのルアーにチェイス

があり、上手く移動距離を抑えた誘いが入りバイトに結びつけた。

「やった、食った!」

上手く合わせも決まり、後はスムーズにフロントデッキに登ってファイトするだけだ。

大塚さんがトップデッキに移動しようとする姿勢を取った時に前方に目をやると、そこに

はまだ増田さんが立っていた。

「増田さん、下がって!下に下りて大塚さんと換わって!!」

一瞬何のことか分からない、といった表情をした後に事を察して急いでルアーを回収し、

増田さんがミヨシを向いて右方向から下に下がり、左側から入れ替わって大橋さんがトッ

プデッキに立った。

大塚さんは経験者なので安心はしていたが、念の為に後ろに立ってイザという時サポート

出来る体勢を整える。

1度段差に足を取られて転びそうになった大塚さんの腰を一瞬支えたが、後はノーサポー

トでキャッチまで持ち込んだ。

船長の見事なネット捌きが1発で決まった!

釣り人3人と2人の船長の気持ちがこの瞬間1つに重なった。

「やったー!」

手を取り合って喜んだ。何だか泣きそうなくらいに嬉しかった。

大塚さんおめでとう!

さあ、次は増田さん順番だ!

 

 

その時もあっけないくらいに直ぐに訪れた。

ミヨシに立つ増田さんがなにやら大声で叫んでいるが、風が強くてよく聞こえない。

「何?来たの?」

ブゥワッシャーーッン

とケタタマしいバイト音を鳴り響かせる。

この時、一段下の大塚さんのまたその後ろにポジションをとっていた自分には見えなかっ

たが、チェイスして来たGTが物凄い勢いでポッパーを襲い、引っ手繰って行った姿を自

分以外の2人は見たようだ。

増田さんは驚きながらも必死にファーストランを堪えている。

心の中で

「頼む!捕ってくれ!」

そう叫んで、実際には

「落ち着いて増田さん、絶対に捕れるよ!」

と言っていた。

今まで、エンジンを切った状態で横から吹く風に流していた船の上で、フォローでばかり投

げていた増田さんに、船長が「前にも投げてみて」とアドバイスした正に1投目のバイトだ

った。

増田さんは苦しそうだが、昨日ランディングでバラした時よりは、1回経験した分落ち着い

ている様にも見える。

自分も大塚さんも増田さんに駆け寄って声をかける。

船長も素早くランディングネットを持って駆け寄った。

大塚さんのキャッチ以来、船内の一体感は一層増している。

「絶対捕れる、がんばれ!」

「増田さん、耐えろ!がんばれ!」

大塚さんも勿論自分も、自分の時よりも必死になっている。

お互いに自分のファーストキャッチに重ねて見ているのだ。

コモドニクスをくわえたGTは確実に船長が手にするネットに収まった。増田さんは今度は

ちゃんと思い出してタイミング良くリールのベイルを返した。

「やったー!!!!」

喜ぶ2人をよそに、増田さんはただ呆然と自分が釣ったGTを見下ろして暫くは呆然として

いた。

自分にとってもこの1匹は大きな一歩だ。自分以外の釣り人がエンジェルズエンジンのルア

ーでGTをキャッチした始めての1本になったのだから。

他魚種でも自分以外の釣り人の初めての1本はとてつもなく嬉しかったが、メーカー立ち上

げの直接の原動力になったGTもまた格別だった。

そうだ、これがその意味で「はじめの一歩」となったのだ。

 

 

その後このGTを大事に膝に抱えた増田さんをしっかりとファインダーに収めた。ちなみに

増田さんはカメラを忘れて急遽買った”写るんです”(今でも売ってるんだなぁ)を使おう

としたのだが

「せっかくの初GTなんだから僕がデジカメで撮りますよ」

と言うと

「そうだね、この写るんですは記念にとっておくよ」

と言った。

増田さんはここでも、あわてん坊さん振りを発揮したのだった。

 

 


「約束だからそのポッパーはプレゼントしますよ」

「えっ、1個しか無いんでしょ、貰えないよ」

「約束は約束だよ。それに初GTは1回キリだし、初GTを釣ったルアーだって、これ1

個しか無いんだよ」

「そうだよね、ワシ船長にサイン書いて貰ってこのルアーケースに入れて家に飾っておく

よ」

「うん、そうしてよ。これは増田さんのルアーだよ」

「本当にええの?」

「いいよ」

「ありがとう、ありがとう」

「ワシ、このルアー大事に飾らしてもらうよ。ありがとう」

 

 


自分も増田さんに大きなプレゼントを貰ったのだ。

大塚さんとも増田さんとも一緒に感動を味わえた。

もうこれで良いんだ。本当にこれで良かった。良かった良かった‥‥。

 

 

本当にそれで良いのか!

自分を突き動かす大きな塊が、その時自分の腹の底から重たい雲のように、堪らず吐き出

す汚物の様に湧き上がって来た。

それは、物凄くオドロオドロしくて、そして恐ろしいモノの様にも感じられた。

 

 

お前は本当にそれで良いのか!!

 

 

 


第四回「はじめの一歩」最終章「野獣再び」

 

何だか分からないけど、たまらない気持ちになってきた。

「このまま帰りたくない」

もしこの言葉を20代の女性に言われたら、それこそたまらない、と思うことだろう。で

も自分はアラフォーのくそオヤジ予備軍だ。可愛げもなんもあったもんじゃない。

言葉になり切らない言葉が、気持ちが噴出してきた。

「僕、ミヨシで投げて良いですか?」

別に我慢していた訳でも遠慮していた訳でもない。

でも、今はわがままを承知でミヨシに立ちたい。

もう時間的に最後のチャンスだ。それが誰にとっても同じだという事は理解しているつも

りだ。

でも、この最後のチャンスを自分に譲って貰いたい気持ちを打ち明けた。自分だけがキャ

ッチをしていないので2人は快くミヨシを譲ってくれた。自分だって1本でもキャッチし

ていたら、こんなにわがままなお願いはしなかったと思う。

「良いよ良いよ、投げなよ」

2人とも自分よりも年配の方だが、1度も自分を年下然として扱ったりはしなかった。

ただ、この時だけは自分を年下の男として扱ってくれた様に感じた。それが2人の優しさ

だった。

 

 

ミヨシにたった。

残り時間はすくないが、焦ってリズムを崩せば元も子もない。慎重になり過ぎないように

慎重になった。

キャストする。着水の手前から飛んでいくルアーを見ながらサミングする。着水と同時に

ベイルを返す。ラインが着水前に海面に余分に垂れない様に立てていたロッドを寝かし込

みながらリーリングで素早く糸ふけを回収しながら同時にポッピングの体勢を整え即ポッ

ピング。特に着水からのタイムロスを防ぐ事に意識を集中する。ポッピング中は集中を切

らさないように程よく緊張感を保ちながら、一定間隔でジャークを繰り返す。

一連の動作を繰り返し行った。

海況を観察する以外は余計な事を考えない様にした。

あきらめたらお仕舞いだが、焦ったら半分はお仕舞いだ。

それは長い時間だった気もするが、実際にはミヨシを譲って貰ってからそれ程間もない時

だった。

 

 

 

 


激しい水飛沫が上がるわけでもなく、凄まじい捕食音が鳴り響くわけでもなく、ポッパー

は音も無く静かに水中に消しこまれた。

あるいは自分の耳には音が届いていたのかも知れない。その時の自分には聞こえなかった

だけかも知れない。

ポッパーが消えていく映像はまるでスローモーションのみたいに見えた。

一気にロッドが魚の方向に持って行かれ、次にドラグが悲鳴を上げる。

ウィンウィンウィーーーーーンッ!!!!

ロッドを力を込めて自分の側に引き戻し、合わせを2・3度入れる。両手でロッドを抱え

直してバッドエンドをギンバルに差込み、今度は体重を乗せてロッドを支えたまま念押し

の合わせを入れた。

フックポイントが”ゴリッ、ゴリッ”と顎の肉を深く確実に貫通した確かな感触が、腕の

筋肉に信号となって伝わる。

ロッドをしっかりと両腕でホールドして深く腰を落とし、ファーストランをこらえる。

程なく勢いが止まったので、小刻みにロッドを引き寄せながら一気にリーリングし、魚を

引き寄せにかかる。

結構な重みだが、敵わない相手じゃなさそうだ。

「大きいの?」

「いや、結構いいサイズだと思うけど、メチャクチャは大きくないと思う。30キロはあ

ると思うけど」

しかし船長は

「いや、出かたが地味だったから相当でかいよ」

「そうかな?」

と言った途端、一度は寄せた奴が堰を切ったように一気に走り始めた。

煙が出るんじゃねーか??!ってくらいに激しくけたたましくドラグ音が鳴り響く。

もう1度深く腰を落とし直すが、一向にその走りが止まる気配は無い。全く止まらない。

暫くしてラインの放出は勢いを無くしたが、それは走りが止まったわけではなく、ライン

が根に絡み付いてしまったからだ。

嫌な感触が伝わる。

今日は透明度がそれ程高くないので、どこに根があるのか水中の地形が全く見えないが、

確実に手前のラインが根がかったまま魚が暴れている。

どうする?

先糸のダブルの300ポンドが引っかかっているのなら強引にリフトするべきか?170

ポンドならどうすれば良い?そもそも伝わってくる感触だけではどんな感じにラインが絡

んでいるのか想像もつかない。

一瞬迷ったが、状況が読めないならイケイケイケー!!

構わずガンガンリフトする。少しづつ魚が上がって来ているのが分かる。

ラインがブレイクするのが先か、魚が上がって来るのが先か?

頼む、切れるな!

構わずガンガンリフトする。少しづつ魚が上がって来ているのが分かる。

”バッツン!!”

衝撃が伝わって体が後ろに飛びかけて、手摺をつかんでそれを防いだ。

無常にもラインブレイクの方が先だった。

 

 


決して手を抜いた訳ではないし、もしかなりデカイと分かっていても捕れなかったのか

もしれない。ただ、自分がファーストランから想定したサイズが全くの間違いだった事

だけは間違いなかった。

「うわぁー、やられた〜〜」

ガックリと肩を落とした。

少しの間誰も声をかけてはくれなかった。

よっぽど自分がガッカリした様子に見えて、声がかけずらかったのだろう。変な気を使

わせてしまって申し訳ないが、本当に心底ガッカリしたのだ。仕方が無い。

 

 

 

 

 

 

 


こうして自分の種子島遠征、国内GTデビュー戦は終わった。

「また捕れなかった」

その後の事はあまりハッキリと覚えていない。

宿に戻る車内で船長と

「あのね、いや、言うの止めておこう」

「なに?船長、ちゃんと言って下さいよ」

「自分の船だったら2本目のは取れてたと思う。申し訳ない」

「‥‥‥」

ってやり取りがあったり、鹿児島空港で増田さんが奢ってくれたビールを3人で飲みなが

ら飯を食っていたら、ゆっくりし過ぎて飛行機に乗り遅れそうになって笑いながら走った

り。

そんな断片的な事ぐらいしか思い出せない。

ほとんどボーッとしたまま中部空港で大塚さんとお別れして、駐車場で増田さんとお別れ

した。

 

 


現実ではハッピーエンドはやって来そうで、なかなかやって来ない。

あきらめたらそこで終わり。

あきらめたらそこで終わり。

東名阪を家に向かう車中。

頭の中を何度も何度も、その言葉が頭の中をグルグル回っていた。

 

 

 

 

 

 

 

追記。

10月に再び種子島遠征の計画を立てた。

あと1名足りないが、何とか行けそうだと思う。

またあの海に、自分達の夢を乗せたポッパーを持っていこうと思っている。

大黒様の前に置いてきたティラノスマウスGT。

今はあの経験を元に改良を加えたバージョンを製作中であるが、大物を呼び寄せる性能そ

のものは、あのバージョンのプロトでもう既に完成の域に達しています。

もう既に手にとって見て下さった方もいるかも知れない。

もしあなたが民宿豊生に宿泊されて、まだそこにブラックヘッドのシルバーボディーのプ

ロトポッパーがあって興味を持って頂いたとしたら、遠慮なしに種子島の海にキャストし

てやって下さい。

それを手にしたあなたに、いつまでも記憶に残る素晴らしくかっこ良いGTとの出会いが

ある事を心から祈っています。

 

 

 

 

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