Expedision(account of voyage)

 


 第五回「ディスカバー九州」第一章「ジャンプトリップ」

  

今回は7月18・19日の実釣予定で、18日は壱岐に宿泊の予定。壱岐に泊まるのは初

めての事なので色々とワクワク。

17日夕方。

早々に仕事が片付いたので、空港に早く着きすぎた。

先週も種子島に行っていたので、今回は”遠征”という気持ちが希薄だ。いつものような

「やってやるぜ!」

的なドス黒い野望は沸いて来ない。

珍しくこう思った。

「楽しめたら良いや」

他の釣り場でもそうだが、九州では毎回色んな人と出会い、今でも連絡を取り合っている

人がいる。今度はどんな面白い人と会えるのか。

勿論”欲の無い”振りして、釣りの神様に好釣果をプレゼントして貰おうという腹だが。

 

 

 

天候の影響で出発が遅れるとのアナウンス。

「げっ、ヤバイかな」

とビビる。

会社を出る時に船長に電話したが、「ヤバイかも知れんけど、取りあえずおいで」

と言われた。

もし出船出来なければ、明日は1日中船長と酒を飲む事になるのだろうか?

楽しそうではあるが、そのために飛行機に乗って博多まで行くとは、なんてお高い飲み代

なんだろう。

来い、と言われたら行かねばなるまい。まぁなんとか出船できるさぁ。

時間を持て余し、目に付いたマッサージチェアーで

”ヴィーーーーン”

「あぁ、気持ちええ」

思わずウットリ。

虚ろな目をして喫煙所でタバコを2本吸って、携帯をいじくってたら出発の呼び出しがか

かる。今回は小説を持ってこなかった。1人なので豪寝こくつもりだ。

5月に行った時に、今回も乗船する海楽隊の東野船長が「7月は自宅に泊めてやる」と言

ってくれたのでここは遠慮なしに甘える事にする。

 

 

 

空港に着いて、一服してから足早に地下鉄に乗り込む。

途中船長から電話があった

「妻木ちゃん、まだぁ?ワシもう眠い」

飛行機が遅れたので、船長も痺れを切らした様だ。

姪浜駅に到着。

船長はもう晩酌を始めてしまったので、タクシーで船長宅に向かう。

船長と船長の奥さんとラブさんとビールが出迎えてくれる。2ヶ月振りに船長と奥さんの

顔を見ると「九州に来たなぁ」と時間差攻撃で実感。

ラブさんは2カ月振りの侵入者をバッグの匂いでチェック、不審者は見逃さないのだ!

昔、同じ名前で犬を飼っていたが、こちらは警戒心ゼロ。犬と猫では全く違うのに、同じ

名前と言うだけで何だか愛しさを感じる。

 

 

 

暫くは3人(4人?)で話していたが、「明日早いから」と船長がラブさんを抱いて寝室

に。そのまま奥さんとお喋りをしていたが、「あっ!俺もだ!」て事に気がついて用意し

て貰った布団を敷いた。

「妻木ちゃん、エアコンつけとーと?」

と聞かれたが、エアコンのつけっ放しは必ず喉がやられる。それに遠征とエアコンは自分

にとってとても相性の悪い組み合わせで、ウナギと梅干の食い合わせのようなものだ。

エアコンは消してもらう事にして、ソソクサと眠りに着く。

毎度の事ながら、会社に出勤した朝と博多で眠りに着く夜とが同じ1日だと思うと変な気

がする。どこかで時間をジャンプしちゃったみたいだ。

そういうのはどれだけ旅をしても、いつまで経っても変わらない感覚ニャンだムニャムニ

ャ……ZZZzzz

5分と経たない内に、ここが人様の家だという事も忘れて爆睡の人となった。

タオルケットがいい匂いだった。


第五回「ディスカバー九州」第二章「出船1艇」

 

朝目が覚めて、起きた。

暫くはタオルケットにくるまっていたが、船長が起きてきた気配がしたので布団から降り

る。

ラブさんは早起きで、既に窓の前に”チョッコン”と座って船長の変わりに今日の空模様

をうかがっている。

自分も船長も窓から空を見上げるが、お世辞にも良い天気とは言えない。

風の具合はここからでは分からないが、昨日見た天気予報からすると、少なくともピーカ

ンべた凪って事はなさそうだ。

「船長、出れる?」

「んー?大丈夫やろ」

頼りにしてまっせ、ってそう言えばタックルの用意をしてなかったので、船長がシャワー

を浴びている隙にこっそり組んでいたら案の定見つかり

「今頃なにしとーん?行くぞ」

「ごめん、2分待ってちょ」

今回の遠征は緊張感ゼロの超駄目々で無駄にリラックスしてしまっている。が、まぁいい

や。

 

 

 

船長と家を出てカウンタック(別名軽トラ)に乗り込んで途中コンビニに寄って朝飯・昼

飯を調達。

安いし釣りをしながら食えるので、袋入りのパンと握り飯と1リットル入りのスポーツ飲

料を”ドチャッ”と購入。タバコも2箱買い足した。

港に着くとお父さんがいた。2ヶ月振りに顔を見る。

”お父さん”は自分が勝手につけて自分しか呼んでいないあだ名だが、他の常連さんから

は”ヒラタのおやじ”と呼ばれている。

多分名前がヒラタさんなのであって、ヒラタクワガタが大好きなおじさんって事ではない

と思う。本人にお名前を聞いた事はないが。付け加えるとお父さんは船長と同い年で、自

分の父親よりはかなり若い。自分は”おじさん”の事を親しみを込めて言う時に”お父さ

ん”とか”おやじ”呼ぶので、幅で言うと40代からお爺さんまでかなり大雑把な呼び方

ではある。そんな事同でも良いが、自分はこの博多のお父さんが好きだ。ボクトツな人だ

が何か面白い人だ。

他にも知っている常連さんを探したが、今回はご一緒する事が出来なかった。

 

 

 

船長に聞いたところ、この日この港から出る船は海楽隊1艇のみだということだ。

不安になる。

船は船長が判断すれば絶対大丈夫だが、果たして釣れるだろうか?

良く考えたら、型が小さい事はあったが、自分は今まで船長の船に乗ってボ○ズを食らった

事はない。

なら、まぁ大丈夫だな。

怪しい雲が低く垂れ込む中、船は港を出た。

 

 

 

途中玄界島に立ち寄り、漁協で氷を積み込む。

今回もお父さんは1番の年長者だが、率先してスコップで氷をザックザックトロ箱にかき入

れる。

「おとうさん、俺やるよぉ」

と言ったが、お父さんは無心に氷をかき続けたので、自分は他の人と一緒にトロ箱を船に運

んでクーラーボックスへ移した。

お父さんが汗をかきながら氷をスコップでザクザクやっている姿が面白かったので写真が撮

りたかったが、年長者に力仕事をやらせてしまっている目の前でヘラヘラ笑ってカメラを構

えるのは流石にためらわれて止めた。

ここでの用事は氷積みだけだ。

1度この島周りも釣ってみたいなぁ。島周りならヒラマサいるんでしょ?

玄界島で氷を山盛り積み込んで再出発。

何だか訳の分からない空模様、どうなんだ?

港を出たときからビュウビュウ風は吹き続けている。

 

 

 

壱岐周りに到着して実釣開始

おひつマン(後ほど夕食時に命名)ベラらしき魚ゲット!

デカマサよりも釣るのが難しそうだ。

ヒラゴ(ちびっ子ヒラマサ)がポツポツ来るが、それさえあまり反応が良くない。トップを

投げても出ない。ジギングしてもロクにアタリもない。

自分は今回ジギングメインと決めていたが、あんまり何も起きないのでボーっとして来て、

魚ではなく睡魔と格闘する。

睡魔恐るべし!時々自分の意識を”ザクッ”と刈り取っていく。

ヒラゴは釣ったが、それほど多く釣ってないのに眠たくて何本釣ったか忘れてしまった。

風は相変わらずビュービューだ。移動の時も船室に入っていないと大変。ビッショビショん

なってしまう。自分はメガネっ子なので、度付きサングラスに潮が被るのも嫌だ。

おひつマン、ヒラマサをゲット!びっくりするくらいちっさいけど、喜んでいる人を見ると

こちらも喜べる。やった。

 

 

 


第五回「ディスカバー九州」第三章「宴」

 

この日はチビちゃん達と適当に遊んで、他に特に変わった事は無かった。

「本日も異常なし、平和であります!」

船は今夜の寝床である壱岐へ。

入港

でっかい船、漁船かなぁ?

皆でマイクロバスに荷物を積み込む。皆ジグをいっぱい持っているのでやたらに重たい。

自分はいつもプロトルアーしか持っていないので身軽マン。毎回ロストの恐怖と戦いながら

の釣行にはなるが(汗)

マイクロバスは島の内部にグングン進んで、ものの15分かそこらで今回お世話になる宿”

宝来荘”に到着。何とも旅館らしい旅館だ。きっと飯も美味いはずだ。

到着早々、お魚発見!だが、また小型だ。それも”超”の付く。

マイクロから下ろした荷物を、今度は部屋に運び入れる。

お父さんと船長の姿が見えないので、お父さんの荷物は自分が2階の客間まで運んだ。

お父さんのバッカンは超ヘビー級で腕が抜けるかと思った。

後から聞いたら、船長とお父さんは一緒に出かけて、ついでにビーチでピッチピチの水着を

ウォッチングしていたらしい。自分も一緒にピッチピチ拝みに行けば良かった。

でも見たら夜眠れなくなるかもしらん。ピッチピチ、ピッチピチ……。

東京おやじ(東京から来たプロレス好きの40代のおじさん)が先に風呂に入りに行って、

帰って来てからおひつマンとアイママンとガンママン(3人は同じ会社に勤める釣り友達で

おひつマンだけにあだ名を付けるのも何なので、お2人にも付けさせて頂いた)と自分で風

呂に行った。

そんなに大きな風呂ではないが、気持ち良いったらなかった。潮と汗と一緒に疲れを洗い流

して、自分はのぼせる前にさっさ先に上がった。後は若い方同士で、ってな感じに。

 

 


1階の宴会場横にある風呂から出て2階に上がると、踊り場にはさっき立てかけておいたロ

ッドがズラッと並んでいる。明日はこのロッドが全部飴の棒みたいにグンニャリ曲がってく

れたら良いなぁ。全部が無理なら自分の竿だけでも……ただの意地汚い釣り人の罪の無い妄

想だ。

ガンガンにエアコンのかかった部屋に戻って窓から外を見ると、物凄い強風だ。

吹流しがポールダンスをしているみたいに真横を向いている。

筋肉ムキムキのポールダンサー。

明日が心配だが、まぁ考えたって仕方ない。飯、めしっ!

海の幸が山盛り待っている。

急いで階段を駆け下りて宴会場に向かう。腹減った!腹減った!腹減った!

ガンママンとアイママン

お父さんにプロレスの話を聞かせる東京おやじ

船長、明日も操船なので深酒しません。でも結構飲んでたような?

生ビール大好きガンママン。いつでもマイペースのアイママン。

本来は釣りをする人ではないのに、”九州は飯が美味い”という理由だけで、道具は全部

友達に借りて来た。キャスティングは一切しない。釣れなくても食べられればオッケイ!

おひつごと食らい尽くしそうな勢いのおひつマン。この人の生き方は学ぶ所がある……よ

うな気がする。こんなに美味そうに飯を食らう人はそうそういない。このネーミングは絶

妙だったのでは?と自己マンで悦に入る自分

謎の中国マフィア現る!!

魚が美味い!飯が美味い!魚は釣れなかった!でも楽しくて仕方ない!

今回も良い人達と会えた気がする。あっ、”気が”じゃなくって実際に良き人ばかりだ。

米は3杯食った。おひつマンはおひつをお代わりしていた。

流石はおひつマン!凄いぞ、おひつマン!

自分は密かに、おひつマンが部屋におひつを持ち帰らないように見張っていたのは言うま

でも無い。

 

 

 

楽しい宴が終わって部屋に帰り、皆でノット製作大会を開く。案の定おひつマンはあまり

興味がなさそうだ。

アイママンがおひつマン用のノットを作りながら説明をしているのに、半ば上の空だ。

本当に食う事しか興味が無い様で、その徹底振りには一種清々しささえ感じてしまうほど

だ。律儀なアイママンが少し可愛そうな気がしたが、3人とも本当に仲が良さそうだ。

仕事仲間とこんなに仲が良いなんて凄いなぁ、と思う。

東京おやじは隙があればプロレスの話に持ち込む。またそれが半端なく詳しくて凄い。

恵比寿様に手を合わせて眠る体勢に入る。

そう言えば種子島の民宿宝生にも恵比寿様がいたっけ。

またお会いしましたね。

調整の聞かないエアコンにやられないように、頭から深々とタオルケットを被った。

少し匂う気がしたが、気のせいかどうか考えているうちに意識が途切れ、深くて心地よい

暗闇にスッポリと吸い込まれた。

 

 

 


第五回「ディスカバー九州」第四章「ちびっ子ギャング」

 

実釣2日目最終日。

朝「グヌヌゥーッ」と起きて気が付くとお父さんが布団の上に座ったままでボーッとして

いた。

「お父さんおはよう、どうかしたの?」

「エアコン効きすぎとったけん、さーぶかったっちゃ」

「俺、頭までタオルケット被っとったから、助かったよ。大丈夫?」

「あぁ、なんて事ないっちゃ」

次々に皆が起き出した。

イビキがうるさいという理由で他の部屋に寝ていた東京おやじが入ってきて、「昨日枕元

にお婆さんが立っつたよ」と東京弁で普通に言ってのけていた。

冗談かどうかわからないが、サブッ!

窓から外を見ると、昨日と変わらず吹流しがポールダンスをしている。彼は(あるいは彼

女は)もの凄い筋持久力だ。

しかも勢いが増している様ないない様な。

 

 

 

人数分の弁当を受け取り、全員の荷物を積んだマイクロバスは駐車場で方向転換してから

昨日来た道を今度は戻って行った。

途中で島のストアに寄って、他の食い物と飲み物を調達。

皆の買い物が終わるまで船長とエロ本を見て”ニターッ”と笑って待った。

港に着くと港の中まで風が吹き込んでいたが、港の外はもっと激しそうだ。

皆結構飲んだ様に見えたが、さっぱり元気だ。

 

 

 

港から船が出ると、やっぱし風がすげぇー。

波はジャバジャバ

所々晴れ間は見えるものの、暗雲が立ち込める。

魚探に反応が出るものの全くジグに触る気配が無く、右手の腕のダルさだけが右肩上がり

に増して、皆の気分は右肩下がりに急降下だ。

急に何百メートルか先にナブラが立って船は急行!

1度目は不発。

2度めの突っ込みでミヨシ一段下に立ち居地を取っていた自分のルアーに”ガツガツッ”

と気持ち良い魚信が伝わる。

丸呑みくん

どれだけ前に出して撮影しても”ヨコワ”はヨコワだね。

ちっちゃくても黒マグロはかっちょ良ー!

ちっちゃくても旨そうだし。

このまま追っかけ続ければ、このルアーなら恐らく釣れ続けるだろう。そういう前例が何

度かあるルアーだから。

ヨコワのナブラだって事が分かったし、他の同船者の方にも釣って貰いたかったので自分

は一旦竿を置いたが、その後反応が無くなりその内距離が詰められなくなって船長も追う

のを止めた。

さぁ一瞬のプチお祭り騒ぎが過ぎ去り、また海は沈黙してしまった。ただし風と波は騒が

しいままだったが。

何度か移動を繰り返す。皆段々とダレて来たが、休憩下手の自分は移動の合間にムシャム

シャ弁当を頬張りながらも淡々と釣りを続けた。

お父さんは船長室で船長の横に座り、船の中で船を漕いでいる。

コックリコックリzzzZZZ‥‥ドンッと船長の肩にお父さんの頭がぶつかる。

「イテッ!」

暫く経つとお父さんは船を漕ぎ出す。

そんな時間が長く続いた。

 

 


時間帯が変わると自分に少しずつアタリが出始めたが、食いが浅いのかちっとも針かかり

しない。

タイミングをずらしつつしゃくり続けると、程なくしてアジャストする事が出来た。

しかし重みも引きもかなり物足りない。やはりちびっ子ギャングくんだった。

1度タイミングが合うと連発が始まり、怒涛の連ちゃん。ただギャングまみれ、他の人が

ポツポツ1匹2匹釣っていく中1人竿を曲げ続けたがヒラゴの猛襲をかいくぐる事が出来

ない。逆にうちのジグが”小型専用”に思われやしないかと心配にすらなって来る。

このタイミングで自分が嬉しい中型のカツオをゲットして、自分のジグに興味を示してく

れた例のおひつマンに同じジグを渡して、おひつマンにもチャッカリとカツオの釣果があ

った。

彼の初のカツオ釣果だ。

彼が嬉しそうなので自分も嬉しい。ただ彼が喜んでいたのは、自分が釣ったという事実よ

りもむしろカツオが食えるって事だったのは想像に難くない。

それで全然構わない。楽しけりゃいーんです。

おひつマン笑顔は抜群だが姿勢が悪い(笑)

船長にも「姿勢が悪いぞ、胸張ってなきゃ駄目」と言われていた。

 

 

 

自分はついにヒラゴの猛攻をかわす事が出来なかったが、ソナーに魚影が映ったタイミ

ングでミヨシに立っていたガンママンが6キロのヒラマサをゲット。

ガンママンやるなぁ。

皆で喜んでいて写真を撮るのを忘れてしまったが、この日はこれを最後に船中釣果があ

がる事はなかった。

 


第五回「ディスカバー九州」第五章「ワンダホー博多〜1人反省会IN福岡空港」

 

寄港途中、眠るともなく船室に横たわる。

今回の遠征実釣終わりは、いつまでも諦め切れないマンジリともしない気持ちは襲って来

なかった。

何だか気が抜けてしまった。でも自分でもビックリするくらいサッパリした気持ちだ。

「やり切った」とか「次に繋がるモノを見つけた」とか

そんなモノも一切無かった。

ただ九州に来て、釣りをして飯を食って、笑って楽しかっただけの事だ。

 

 


港に戻って「今日の獲物を肴に居酒屋で飲もう」って事になって、船長と2人で”ろばた

波津城”に魚を置きに行ってから船長宅に一旦戻った。

船長と順番にシャワーを浴び、暫くテレビでルーキーズの再放送を見た。

大ヒットドラマだが自分は見た事がなかった。良い話じゃん。

少し落ち着いてから、船長と奥さんと3人で呼んでいたタクシーに乗って波津城に向かっ

た。

まだ全員揃っていなかったが、腹がめちゃくちゃに減った。

「皆早く来ないかなぁ」

皆が揃う前に我慢出来ず、お通しに手を付けてしまった。行儀が悪いと育ちが悪いのがバ

レてしまう。誰も思ってないか。違うか。

皆揃った!!

飯!飯!

お父さん・東京おやじ・アイママン・ガンママン。

おひつマンはカメラを向けても無心に食らい続ける。こんなに笑顔のまま飯を食らい続け

る人を自分は他に知らない。

彼の生き方には学ぶところがあるような‥‥気がする。

マグロ(ヨコワだけどね)もカツオも抜群に旨い!

船長の顔で大将からの特別メニューもてんこ盛り。

面白く楽しかった。

2日間の不釣果も釣りの疲れも、この時は丸っきり忘れる事が出来た。

 

 

 

帰りは船長と奥さんと3人で歩いて帰った。

船長が立ちションをしているのを奥さんと2人で待っていると、船長の姿に笑いが込み

上げて来た。

船長は横着坊主のまま大人になったような人だ。いつも自由だし笑える。良い年の食い

方してんだなぁって思った。

 

 

 

その日はもう1度船長ちのタオルケットに包まって眠った。何も考えなかったし、い

つ眠りに落ちたのかも覚えていない。

 

 

 

朝5時。この日も船長は出船。

自分は船長と同じ時間に起きて駅まで送ってもらう事にした。

旅割で買った中部空港行きの飛行機は正午発だったが、何だか暫くブラブラしたかっ

た。

眠い。

荷台から荷物が落っこちないか心配しながら姪浜駅に到着。

船長に礼を言って深々と頭を下げ、何もする事もない予定もない1人の時間が不意に

訪れた。

駅のコンビニに寄ってタバコと午後の紅茶のストレートを買って、店の前に設置され

た灰皿の傍らの地べたに腰を降ろしタバコに火を着け煙を深く吸い込んだ。

1本をゆっくりゆっくり吸った。

ボーーーーーッと歩く鳩と煙をを見ながら時々眠い目を擦った。

何か考えてみようかと思ったが、眠くて何も考えられなかった。

荷物をゴロゴロ引きずって駅構内に入って電車に乗って空港に向かった。

連休の最終日は空港が凄く混雑する。早く行って正解なのだ。

 

 

 

空港ではサンドイッチを食ったり、外に出て喫煙コーナーでタバコの吸い貯めをし

てから、かなり余裕で手荷物検査を済ませて中に入った。

ベンチに腰掛けて色んな事を考えた。

今回は全く良い魚が釣れなかったけど、凄く楽しかった。ロクに釣れていないのに

こんなに楽しかった事は無かったんじゃないだろうか。

「それで良いじゃん」

とも思ったし

「最後までデカイのを釣る事にこだわりたかった」

とも思う。

いつだって頑張って釣りをするから、あくまでも気持ちの問題だ。

自分にとって、こういう楽しみ方はもっと年を食ってからで構わないし、いつだっ

てデカイのを釣りたいから遠征を計画するんだ。

でも人生って、ちゃんと飯さえ食えれば後は楽しんだ者勝ちじゃないかなぁ。”勝

ち”ってのは適当な言葉じゃないけど。

確かに釣れん時は釣れん。

そんな時はこんな風に楽しんでも良いな。

あと、これから遠征2週連続は出来れば止めておこう。モチベーションの入れ替え

は大切だ。

人から見たら欲張りすぎな程色んな魚種を追っかけているので、余計にこれが大切

だ。

今までキッチリとアジャストしてきたが、遠征の回数が増えるに従ってこの作業が

難しいモノになって来ている。

もっと気楽に取り組めば良いに違いないが、自分は未だそこまで人間が出来上がっ

てはいないのだ。

方法はこれから考えなくちゃいけないけど、気持ちの作り方を自分なりに構築し直

そう。

自分は釣りが大好きだ。

デッカイのがいっぱい釣りたい。凄く釣りたい。

 

 

 

「その気持ちだけは変わってないね?」

って自問して「うん」って返事が返って来たのを聞いて、安心してまた眠たくなっ

た。

後は今度考えてみよう。

出発までまだ30分は眠る事が出来る。

次の種子島遠征は10月だ。きっとデカいの釣ってやる。

意識が薄らいで行って、1人反省会は終わった。

そして自分の’09年7月九州遠征もここで終わりを告げた。

 

                 ー 完 ー

 

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