Expedision(account of voyage)

 

 


第9回「雪辱の島」     第1章「台風15号」

 

「きっと無理だろうな」

かねてから楽しみにしていた種子島・硫黄島GT釣行遠征。

地元にも甚大な影響を及ぼした台風12号。それ以上の被害が予想されるという15号の

進路と大きさを予報図で確認して当然そう思った。

 

 

 

 

 

そう言えばこのエクスペディション記事は去年の福岡遠征以来書いていない。

あれ以来種子島に数度、初の奄美・トカラGT遠征、福岡にも数度遠征をしていたのだが

去年は巡りが徹底的に悪く、オマケに腕も悪い上に運にも見放されて絶不釣・不釣果不釣

果の繰り返しだった。

忙しいのにかまけてもいたのだが、とても記事を書く気になれなかったというのが正直な

気持だった。

一部楽しみにしていてくれる方々もいてくれるので、これからは不釣果でも極力記事化し

ていくつもりです。

 

 

出発予定の三日ほど前に、今回もお世話になるトラベルプロインターナショナルの山田さ

ん(リンクページをご覧下さい。任せて間違いなし)からの電話の内容は思ってもみない

内容だった。

「船長が何とか行けるだろうって言ってるよ。硫黄島は無理かも知れないけど馬毛島なら

OKだろうって」

えっ?ほんとうに?

今までの4回(5回?忘れちゃいました)の種子島遠征では全て台風や悪天候絡みばかり

だったし、2回程中止の憂き目にもあったので、正直台風の予報を見てガッカリしながら

も、ほんの少しホッともした。

「残念だけど、浮いたお金でまたどこかに釣りに行こう」

そんな風に思っていた。どこかで気持が逃げていた。

前日になっていよいよ遠征が成立すると決定した時、もういっぺん自分の気持ちを作り直

した。

「自分は遠征に行ける日程が限られている。船さえ出ればいつでも行ける時に絶対に行か

なきゃ。自己記録更新は”運”だけじゃなくて自分の力と努力で勝ち取りたい」

なんか多少入れ込み過ぎだけれど、単純に「行かなきゃ釣れん」のである。

釣果・不釣果にとらわれず、釣る気持ちで行こうと思った。

 

 

 

 

 

9月15日夜。

中途半端でやめていた遠征の準備を、そそくさと一夜漬けでする。

「明日は種子島だ」

GTの自己記録更新を目指して頑張ります。

 


第9回「雪辱の島」     第2章「出船可能」

 

自宅から車で向かって約一時間弱。中部空港11:20分発鹿児島行きNH353便は遅

れなくフライトの時間を迎えた。

行けないつもりでいたので若干現実感がなく、なんだかフワフワした感じだった。

以前から読んでいた本のページをめくっている内に、着地の衝撃音で鹿児島に到着した事

に気がついた。移動中は寝るか、本を読むか。

 

 

 

 

 

ダークグレーの分厚い雲

 

 

 

 

 


ひどい雨

 

 


鹿児島空港では出発ロビー内にJALの乗り継ぎカウンターがあるので本当は必要が無い

のだが、出発までに時間があるし腹も減ったので一度階段を降りてからレストランやお土

産が並ぶ階に上がって行った。

荷物はANA→JALで奄美大島まで引き取る必要が無い。

 

 

 

 

 

まず喉の渇きを癒し

 

 

 

 

 

黒豚ロースのカツカレーで腹を満たす。お腹いっぱい。

 

 

鹿児島発種子島行きJC3771便は条件付きのフライトになるとアナウンスが入ったが

まぁそりゃそうだろう。

「ここまで来て飛ばないとかなり面倒だなぁ。飛ぶのかなぁ」

 

 

 

 

 

時折かなりの揺れが起こりはしたが、無事空港に到着。

種子島空港に着くと懐かしい顔。豊生丸の岩元船長が出迎えてくれた。

今回はもう一方、伊丹空港からの同船者が見えるのだが、便がもう少し後だという事なの

で、自分は1人部屋でタックルの準備を一通りしてからくつろがせて貰った。

 

 

 

 

 

今回のタックル他もろもろの荷物はこれで全部。かなりシンプル&コンパクトにまとまっ

ちゃってます。

今回はコモドニクスとキマイラ200のテストがメインになります。

 

 

 

 

 

船長のパジェロに乗った今回の同船者の中本さんが到着し、雨の中荷物を部屋に運ぶ。

明日は本当に出船出来るのだろうか?

その日は2人で飯を食い、タックルを準備し、自己紹介と色々な話をして早目に寝床に入

った。

「出られるのかなぁ。出たら釣れるのかなぁ」

 

台風の影響下、種子島の夜は更けて行った。

 


第9回「雪辱の島」   第3章「雨・風・風裏・インチク」

 

夜中、意識の遠くの方でかなりの激しい雨音と風の音が聞こえてきた。

夢の中の出来事だったらいいのに、と思いつつも、実はそれが現実であると夢うつつの中

でも理解していた。止めばいいのに・・・ZZZZzzz

 

 

中本さんは既に起きていた。眠い。どうやら雨は止んでいるようだ。

昨晩のテレビの予報で天気図は見ていたので、台風の影響は避けられないのは嫌って程解

らされていたので、出発の時だけでも雨がないのは嬉しい。パジェロに荷物を積んで約5

分程で豊生丸の停泊されている港へ。

 

 

 

 

 

豊生丸。今回もこの船で出陣。

 

 

 

 

 

晴れ間が見える。嘘でも嬉しい。

 

 

 

 

 

今回ご一緒して頂く中本さん。朝の缶コーヒーで余裕の一服。2人とも無事で釣って帰り

たいです。

 

 

 

 

 

途中の港で給油。

 

 

 

 

 

少し外に出ただけでグチャグチャに波立つ海。うわぁ、出来たら勘弁して下さい、と思い

つつも気合を入れていざ出陣。

 

 

 

 

 

と言いつつも、風の影響を避けてポイントを移動し、巡り巡って反応は一切得られずイン

チクタイム。自分は持ってきてないので休憩タイム。

 

 

潮が動かない。ベイトが居ない。

結局この日はインチクでも釣果無しで帰港。アチャー、実釣初日ののっけからかなり厳し

い。正直一日中を通して全く釣れる気がしなかった。少しはそういった嗅覚の効く方だと

は思うのだが、一切チャンスを感じなかった。

「どうしよう。なんだかなぁ〜」

 


第9回「雪辱の島」     第4章「1チャンス」

 

 

 

 

気を取り直して2日目出港。相変わらず雨は降ったり止んだり。時折前が見えなくなる程

降ったかと思えば一瞬晴れ間が見えて強風・・・その繰り返し。

今日も風裏の回れるポイントを次々撃って行くが、全く反応も無し、ベイトも少ないと船

長が漏らす。

 

 

 

 

 

そんな時はインチク。今日もインチクですら釣れんのかなぁ。

 

 

 

 

 

おぉっ!何かかかってるじゃないですか!なになになに?なぁに?

 

 

 

 

 

ゲットォー!!魚の名前は忘れちゃいました。中本さんナイス!

 

 

 

 

 

風裏にまで時折強風が巻きこみ始めた午後2時過ぎ。中本さんは引き続きインチクをやっ

ている。

自分は暫らく煙草を吸ったり中本さんのインチクを観戦していたが、何となく「水面下の

状況が変わったかもしれないな」と思ってそそくさとミヨシに立ってキャストを始める。

今回はコモドニクスをメインにキャストしていたが、様子見で比較的楽チンなキマイラを

投じてみた。

ジャジャーッSTOPジャジャジャーッSTOP。

 

 

 

 

 

ショート目なロングジャークとホンの気持ち長めのストップを織り交ぜながらロッド操作

を繰り返す。

7シャクり程した所で強烈なバイト!!!

「ノった!」

ロッドが引き込まれる。

渾身のアワセを・・・テンションが抜ける。「ああああぁぁーー↓ノったと思ったらノら

んかった」

「GTすか?」

「そうだよ!」

中本さんがミヨシにまわって来て、今度は2人でキャストを再開する。この海況と台風で

制限されたポイントとベイト反応の薄さから考えると、もしかしたら今釣行ではチャンス

が二度と巡って来ないかも知れない。いや、その可能性は低くない。

 

 

こういった時合いは得てして短い。ここぞと集中してキャストを繰り返す。

「おっ、出た」

キマイラを派手なバイトでGTが襲う。も、ノらず。ボディーに触ったのか触らないのか

もう一度襲いかからせる事が出来なかった。

数度キャストを繰り返しているとキマイラに三たびバイト。結構なサイズだったがこれも

残念ながらノらず。

1本目がノらなかったのも食いが浅いのか。

中本さんも頑張ってキャストしているが、バイトが無い様だ。

その中本さんにバイト!!ノった!!

自分もサポートで少しお手伝いさせて貰って揚がって来たのが

 

 

 

 

 

このGTだぁ!やったね、中本さん。

もう一度船を流し返す。もう4〜5度流し返している。船長もこの状況ではここで勝負を

かけるべきだと判断したのだろう。

中本さんは休憩している。

投げる投げる投げる。巻く巻く巻く。

少なくとも今日はこれがラストチャンスだ。

 


第9回「雪辱の島」     第5章「ラストチャンス」

 

投げる投げる投げる。巻く巻く。

とにかく、少なくとも今日この日ははこれがラストチャンスだ。それだけは多分間違いな

いだろう。

中本さんもそれを感じたのだろう。先程のGTとのファイトで疲労した体に鞭打ってキャ

ストを再開した。

2人とも口数が少なくなる。投げる、とにかく投げる。

若干集中力が途切れた時、キマイラは手前10メートル程。次のキャスト地点を見ながら

ルアーからは目が離れていた。

ジュッボゥヮー!!

「うぉっっ!」

紛れもなくGTが目の前でキマイラを背中から襲い引っ手繰る。ロッドを充分に曲げ込ま

せてから渾身のアワセをくれる。

”ゴンッ!!”

”バッッツンッッッ!!”

リアグリップの手元まで一気に曲げ込む、力を込めてアワセた瞬間乾いた破裂音と共にP

E8号が砕け散った。

「げっ!切れた。」

今までドラグが強めだった自分は2〜3度アワセ切れを経験し、またドラグ値が高過ぎて

取りこぼした魚が多いのではないか?との反省点から、今回から自分としては緩めのドラ

グで挑んだつもりだった。

「・・・やられた」

 

 

その後は撃てども撃てどもGTのバイトは訪れなかった。

「やってしまったかもしれない」

 

 

 

 

 

帰港途中、自分の気持ちを表すかのような空。

 

 

 

 

 

帰港。ドップリと暮れてしまった。船長遅くまでありがとうございます。

一時的な土砂降りの時にかなりずぶ濡れになり、その後風が強く吹いたせいか午後から急

に喉の調子がおかしくなり、宿につく頃には唾を飲んでも痛む程になってしまった。

なんだかいつかのコモド遠征を思い出してしまった。あれは天狗熱だったのだろうか?

4バイト2針外れ1ラインブレイク。自分はチャンスを全くモノに出来なかった。

中本さんは1バイトをモノにして1キャッチ。肉つきの良い30キロクラスのナイスフィ

ッシュだった。

 

 

 

 

 

台風がグルグル回って天気も怪しいが、自分の体調もかなり怪しい。なんたって喉が痛い

のだ。

その日はあまりに喉が痛くっておかみさんが作ってくれた夕御飯も一切食えず、船長に貰

ったタフマンと水とコーラと柔らかくて甘い黒糖の菓子を食って唸りながら寝た。

 

 


第9回「雪辱の島」     第6章「Uglyラスト」

 

朝起きて少し喉の痛みは治まっていたが、飯は食えなかった。腹はメチャクチャに減って

いたので、昨日の残りの甘いお菓子を食ってたらふく水を飲んだ。

あぁ肉が食いたい。

 

 

 

 

 

台風で海況は相変わらずなので撃てる場所は限られている。昨日バイトが連発したポイン

トに直行。

2〜3時間程キャストし続けたが、自分はついにダウン。船室に潜り込む。

「船長、1時間程寝ます」

とだけ伝えて気を失う様に横になる。

 

 

気がつくと帰港していた。腕時計を見ると針は3時を指していた。船長は係留作業をして

いた。

中本さんに「なんでもう港に帰って来てるの?」と聞くと「ぜんぜんバイトもないし、ベ

イトもいないし、風が強くなったので早上がりしました」との事。

今回の種子島遠征はこんな風に不意に終わってしまった。

 

 

この記事が書き終わった本日は10月17日。

今回の種子島遠征から帰って丁度一か月。体調を崩して実釣最終日、あの日宿に帰って飯

を食ったか食わなかったか、思い出せない。

まともに飯が食えなかったので、あの時は数日体重が減って喜んだが、直ぐに出張に出て

クライアントさんと一緒に夜お付き合いしたら一変に元に戻ってしまった。

10月7日から奄美・トカラ遠征に出て帰ってきた今、種子島での事が何だか全てボンヤ

リしている。

 

 

 

 

 

種子島発鹿児島行きJC3762便も鹿児島発中部行きNH354便も奇跡的だったのか

そうでもないのかキッチリ飛んだ。

クライアントさんや遠方の友人から「駅とか救命ボートが出たり、浸水した家がいっぱい

あって大変だったでしょ?」と何件も電話を貰ったが、当の本人は地元が一番大変な時に

台風と一緒に南の島らしくなかった南の島にいたので、なんだかピンとこなかった。

自宅に影響はなかったが、本当に大変だった様だ。

 

 

今回ダメ駄目だった遠征だが、ルアー開発では手応えを感じた事もあった。

キマイラは160に続き200もかなり有効だと感じた。自分に腕も運も無かったのは愛

嬌というか・・・すごい残念だったけど。

 

 

自分の挑戦は一切懲りる事なく、まだまだ続きます。


                   −完ー

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